放課後の生徒会室に、カーテン越しの西日が差し込む。
藤堂護はデスクに肘をつき、静かに目を閉じて考え事をしていた。
気分転換に淹れたコーヒーもすっかり冷め切っている。
「やれやれ、生徒会長としての仕事が山積みだな。それに加えて打倒くにおへの策を練らねばいけないし、やることが多いな……。」
そんなことを考えているうちに、日差しの暖かさと多忙からくる疲れが、彼の意識を徐々に沈めていく。
そしてそのまま、夢の中に溶けていった。
それからしばらく経ち──そっとノックの音が鳴る。
「失礼しまーす、生徒会の鍵、返しにきました〜……って、あれ?」
入ってきたのは藤原小百合だった。
そして、静かに机のイスにもたれて眠っている藤堂を見つけ、足を止めた。
「……寝てる……。珍しいなぁ」
腕を組みながら、静かに呼吸を繰り返す藤堂の寝顔。
その長めの前髪が右頬にふわりとかかっているのを、そっと指先で直す。
「……いつもと違って、寝てると歳相応らしくて可愛いなぁ」
囁くように言った藤原は、少しだけ頬を染めながら、そっと顔を近づけ、辺りを見回した。
「……誰もいないよね?」
二人だけの生徒会室。
確認したのち、その静寂の中、彼女のくちびるが──藤堂の頬に、優しく触れる。
──その瞬間。
「……やれやれ、ずいぶん積極的なんだね」
ぴくり、と肩を跳ねさせた藤原は、藤堂の瞳とばっちり目が合った。
すでに目を覚ましていたらしい彼は、余裕の笑みを浮かべていた。
「とても素晴らしい目覚めだよ、キミの口づけのおかげでね」
「う、うそっ……!? い、いつから起きてたの……!?」
顔を真っ赤にして後ずさる藤原に、藤堂は立ち上がり、キザなポーズを取る。
「もちろん。最初の指先からずっとね。……いやはや、ボクの寝顔にキスをしてくれるなんて、まさかキミがそんな大胆な淑女だったとは」
「だっだって……。寝顔がその……可愛かったから」
藤原は恥ずかしそうにしつつも、素直に答える。
それを見た藤堂はふっと笑い、彼女の手を優しく取る。
「フフ……小百合さん。この続きは、あるのかい?」
言葉と同時に、彼の顔が、ぐっと近づく。
「……っ、ずるい……護くんの、ばか……」
震える声でそう言いながら、藤原はそっと目を閉じた。
次の瞬間──ふたりのくちびるが、静かに重なる。
甘く、優しく、そしてほんの少しのときめきを宿して。
やがて唇が離れると、藤堂は囁くように言った。
「……フフッ、生徒会長の特権だね」
「……だったら、わたしだけの会長でいてね」
そう囁き返す藤原の笑顔は、春の陽射しのように柔らかくて、温かった。